アメリカ人記者解放と「悪の枢軸」

クリントン元大統領が北朝鮮を電撃訪問し、拘束されていた女性記者2人を無事に連れ戻しました。
(解放された記者がロサンゼルス空港で家族と再会したときの様子→BBC : Freed reporters reunited with loved ones
解放された記者による喜びの会見→BBC : Freed journalist's 'surprise' at release

何っていうか・・・アメリカって過去の大統領の使い方がめちゃくちゃ上手くないですか?

現在政府の要職にはついていないので米政府の対北朝鮮政策とは建前上は一線を画すことができる(ホワイトハウスは「人道的見地から私人が行うこと」との説明であった)、それなのに元大統領であり現国務長官の夫(当の現国務長官ヒラリーは、アフリカ外遊中で昨日は夫婦揃ってBBCヘッドラインを飾ってました。 すごいスーパーカップル・・・ 2人は家でどんな会話をしているのだろうか・・・?)。

私は政治や外交には詳しくないですが、クリントン政権時代にカーター元大統領が訪朝したことを彷彿とさせます(その成果もあり、後にカーター元大統領はノーベル平和賞を受賞)。
クリントン政権時代のゴア元副大統領もホットな地球環境問題に取り組んでおり、『不都合な真実』以降、副大統領時代よりも有名であり好かれているのでは?(こちらは「使われている」というより、ライフワークとして取り組んでいるのだと思いますが)

なんか次から次へと役者が豊富に揃ってるなー、という印象。
これからもクリントン元大統領は「人道的ミッション」に頻繁に登場するんだろうな、これ以上のhigh profileな役者はいないもの。

アメリカの外交姿勢って過去8年間のブッシュ政権時代の印象が強すぎて大嫌いでした、自分を世界の警察だと勘違いしているとことか、物事を善悪二元論でしか見ないとことか。 "Axis of Evil(悪の枢軸)"発言まで飛び出した頃は驚きを通り越してあきれた、「あ・あなた、何様?」。
オバマが大統領になったときも、しばらくは足元の金融危機対策で精一杯だろうし、景気回復のため保護主義に走るんだろう、とたいして期待していませんでした。

期待値が低かったためでしょうか? 最近、アメリカの外交、意外に本気だし変わってきているのでは?と好感さえ持てます。 『歴史を変えるスピーチ』で書いたオバマのカイロ大学でのスピーチは本当によかったし、民主党候補選の激戦を戦ったライバル同士だったオバマとヒラリーがすごく歩調が合ってる(ように見える)ところも安心感があります。

政権変わるだけでこんなに両極端に触れる国(しかも、それが世界最大の経済大国)って・・・と改めてその底力に驚嘆しつつ、"Axis of Evil(悪の枢軸)"発言が出た直後に出回った"Axis of Just as Evil(同じくらい悪の枢軸)"という風刺ジョークを思い出しました。
長いので全文ここに引用するのは避けますが、抱腹絶倒の面白さなのでぜひ読んでみてください(私が今でも一番好きなジョークのひとつかも)。 
SatireWire : Passed Over, Syria, China, Libya Form Axis of Just As Evil

このジョークを改めて読み直すと、アメリカが世界中から嫌われていた『悪の枢軸』発言時代から隔世の感があります。
でも、『悪の枢軸』呼ばわりされたイラクではその後数十万人もの一般市民が犠牲者になった一方で、今回の北朝鮮でのアメリカ人記者拘束で元大統領が現地に飛んだことを考えると、人の命の値段って生まれた国によって決まっちゃうのかなー?と複雑なことも思ったりするのでした。

Comments:4

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Sophie August 7, 2009 12:52 PM

Passed Over, Syria, China, Libya From Axis of Just As Evil
のリンクがhttpのpが落ちててリンク切れになってましたよ。

リンク先にも書きましたが、僕も国籍は本当に不平等なシステムだと思い始めました。

la dolce vita Author Profile Page August 8, 2009 9:59 AM

>Sophieさん
>リンクがhttpのpが落ちててリンク切れになってましたよ。
ありがとうございました、直しました〜

>僕も国籍は本当に不平等なシステムだと思い始めました。
何らかの枠組みは必要なんだろうけど、運用がついていってないですよね。

KicoS August 9, 2009 1:18 PM

いつも楽しくBlog拝読させて頂いております。

以下、私見が含まれますので、参考意見としてお読み下さい。

私が読んだニュースを総合すると、
クリントン元大統領は、米国政府が選定して派遣したわけではなく、北朝鮮側が拘束中の記者を通じて訪朝を米国政府に要請しました。
米国政府側は当初、クリントン元大統領派遣に難色を示しており、ぎりぎりまでゴア元副代表(拘束された記者の勤務する報道機関で現在会長職)の派遣を検討していました。
これらを総合すると、「使い方がうまい」という表現は適切ではなのではないかと思います。

また、アメリカの外交政策は、民主党と共和党政権で大きく異なります。したがって、人の命の値段は、「政権の立場」、そして「政権の支持基盤」によって決まっているのだと思います。
例えば、
京都議定書をクリントン政権で署名したにもかかわらず、ブッシュ政権で批准拒否したのは、環境保護団体が民主党のバックに、エナジー業界が共和党のバックにそれぞれついているからではないでしょうか。

これに加え、ブッシュ政権でイラクに侵攻したのは、共和党の支持団体が軍需業界だったから。
イラク進行前に、イラクは原油の決済通貨を米ドルからユーロに鞍替えしたため。これでは、基軸通貨としての米ドルが弱くなってしまいます。米国債を大量に購入している諸外国は、外貨準備高を維持するために基軸通貨国の国債を購入しているわけですから、米ドルが弱体化すれば、米国債を購入する必要が相対的に薄れます。
イラクを侵攻して、軍需業界にお金を落とすだけでなく、原油決済通貨の米ドル体制を奪回することで、米国債の安定的な発行を目指したものと思われます。

イラクに対し、北朝鮮は国際エネルギー・通貨上、キープレイヤーではありませんから、米国の外交戦略上、優先度が低くなります。したがって、クリントン元大統領という「私人」を派遣したのでしょう。
今回の記者拘束が、もしオイルカンパニーの要人だったら、そして共和党政権だったら、私人ではなく政府高官が直接乗り込むなり、軍事的緊張につながったのではないかと思います。

la dolce vita Author Profile Page August 10, 2009 9:57 AM

>KicoSさん
コメントありがとうございます!
たまにcontroversialなエントリーを書きたくなるのですが、アメリカの外交の話とかだとコメントがつかないのよねー、と思っていたので、骨太コメントをもらえて嬉しいです。

>クリントン元大統領は、米国政府が選定して派遣したわけではなく、北朝鮮側が拘束中の記者を通じて訪朝を米国政府に要請しました。
北朝鮮側からの要請だというのは私も読みました。 ホワイトハウス側からすると(クリントンという)「切りたくないカード」を切らされたのかもしれませんが、結果的には(& 国際視点的には)high profileという意味では最高のカードを切って結果も得て(もちろん事前に話はついていたのでしょうが)帰って来た、と映っていると思うのですが。
記者解放と同時にどういう条件交渉をしたかが明らかになっていないので、実際どちらが何を得たかはわからないですけどね。

>ブッシュ政権でイラクに侵攻したのは、共和党の支持団体が軍需業界だったから。
もちろんその通りだと思っています。 ちょっと前にどこかでイラク戦争で米軍需産業が得た利益が載ってました。 数字忘れてしまいましたが、桁違いの額でしたねー
私の同級生がセキュリティ会社(要人をボディガードするやつ、彼はボディガードではないが)に雇われてイラクに半年ほど駐在してましたが、これまた億の年収でした。 戦争って産業なんですね・・・

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